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- 4月16日NEW UP とぽす会員4月歌会 作品・鑑賞 ほか
令和7年 4月歌会 作品と鑑賞
【4月歌会の作品と鑑賞】
春という恋人待つよう白木蓮吐息のたびに和毛ふくらむ 宮野 小町
白い和毛に包まれた白木蓮の蕾は、年明けには見え始める。咲き始める四月まで、作者は 連日のように見続けた。春が白木蓮の恋人と言うが、実は開花へ向かう白木蓮の蕾が作者の恋人のように感じられる。だから作者はそっと吐息を吹きかけてやるのである。
アルプスの消えゆく氷河著し山肌出て来壊れる地球 遊 心
人類の経済活動による二酸化炭素放出で気候温暖化は止まるところを知らない。地球のあらゆる場所が影響を受け、とりわけ山岳地に残された氷河はどんどん縮小している。このままでは雄大なアルプスの氷河も記録映画に残されるだけに。遊心さんの憂心に共感。
追伸と孫に一首の短歌添え今日のラインの結びとなせり 原田 奈津子
LINEでは通信料がかからないだけでなく、様々なサービス機能もあり、多くの日本人にとって不可欠の通信ソフトだ。それが孫との交信手段となり、短歌を添えて送るなどというのはいかにも現代的だ。作者がかなり進化した高齢者だからこその一作である。
地下鉄で彩り競うはいからさん今様袴に黒塗りブーツ 智 絵
長い冬が終わりライトバンで売り歩く八百屋のおばちゃんがようやくやって来た。おばちゃんも張り切って売っているが、作者の方も山と積まれた新鮮な野菜を目の前にして胸わくわくだ。春の一時期に市井で垣間見られる懐かしくも好ましい光景だ。
蕗のとう舌に乗せれば口中に春待ちしものほろ苦き味 森 てい子
蕗の薹の苦味は「ふき味噌」に変身することにより、得も言われぬほろ苦い旨味を醸し出してくれる。また、春は別れと出発の季節であり、ほろ苦い思いも伴う。三句、四句の「口中に春待ちしもの」は絶妙であり、このような独特の表現は余人には思いつかない。
被災地に働く漢 反社には非ずと腕の刺青なでつつ 丹取 元
進化を続けてきた生物の一員として、またはホモサピエンスの末裔として。今生きている我々の生命は量り知れない永久の時間を繋ぎ来て存在している。それは人間誰であっても背負っているものであり、せっかく今咲いているこの命を大切にしていきたいものだ。
山桜なれどたおやか華々し今日は我が家の開花宣言 笹谷 逸郎
痛風は血液中の尿酸が増え、末端の関節あたりで結晶化し附近の筋肉をチクチクと刺し、堪えがたく痛い。でも、現代は良い痛み止めと治療薬があり、「痛みも生きる印」などと言えるようになった。なお、断定せず「生きる印か」とした点に注目だ。
スプーンのジャムを舐めたら逆さまの僕もどうやら舐めてたらしい
梨本 卓也
こちらは、冬から春への季節の移り変りによる身近な雪解けの模様である。なだらかに移行するように見える季節のなかに、句読点のようなリズムを見つけた作者は「ピリオド」と表現した、これは秀逸だ。なお、三句、四句は「残りたる凍み雪とけて」としたら如何。
[鑑賞 笹谷 逸郎]
🔳次回歌会 令和7年 5月3日(土)
場所 仙台:青葉区中央市民センター
(場所など詳しくはお問合せ欄からお願いします)